Kororon 映画について語るBlog

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映画   第十七捕虜収容所       ビリー・ワイルダー  監督

第十七捕虜収容所(字幕版)

 

捕虜収容所を描いた映画、と言ってすぐに頭に浮かぶのは、映画「大脱走」であり、スティーブ・マックイーンがバイクをとばして、ドイツ兵から逃走するシーンであるとか、何度も脱走を試みては失敗し、独房にいれられ、独房の壁を相手にキャッチボールするシーンであるとか、お馴染みなのである。今回、語っていくのは、その映画「大脱走」よりも10年前の1953年に制作された、あのロマンティック・コメディーを撮らせたら一級の腕と言ってもよい、ビリー・ワイルダー監督による映画「第十七捕虜収容所」である。

 

同じ捕虜収容所の映画ということもあって、若干似ているシーンもなくはない、映画「大脱走」による、映画「第十七捕虜収容所」へのオマージュとも考えられるかもしれない、とはいえ、映画「大脱走」では、主にイギリス人が集められた収容所の話であるのに対して、映画「第十七捕虜収容所」のほうは、全員、捕虜となっている兵士はアメリカ人、という設定になっている。前者が、収容所の生活よりも、どちらかというと、脱走の準備、脱走のためのトンネル堀など、タイトルが示すとおり、あくまでも “脱走” に重点を置いて撮影されたと思われるのに対して、後者は収容所内で起こる事件、収容所内での生活の描写に重点が置かれている。

 

その ”第十七捕虜収容所“ で事件は起きる、舞台となる収容棟にドイツ軍に内通しているスパイがいる、というところから物語は始まり、収容所内での生活が描かれるのと並行して、このスパイ探しもメインのストーリーとなってくる。若き日のウィリアム・ホールデンがいい役を演じている。映画での最後のスパイ探しのクライマックスでは、ウィリアム・ホールデン、カッコいい、なんて思っていたら、アカデミー賞で主演男優賞を受賞していた、さもありなん。また、若き日のピーター・グレイブスも観ることができる。ピーター・グレイブスと言えばTVドラマ「スパイ大作戦」での、若干、渋さを増したピーター・グレイブスがお馴染みだったので、この映画での、実に若い、ピーター・グレイブスは新鮮であった。

 

ドイツ軍による、捕虜の取り扱いは、ジュネーブ条約にきちんとのっとっているかと言えば、映画の中では必ずしもそうではないのだが、映画のラストのほうでは、収容棟内でのクリスマスパーティーの様子なども描かれる、捕虜収容所内のこととはいえ、アメリカ兵たちは実に楽しそうにクリスマスを祝っていた、捕虜とはいえ、このような自由は許容されていたのだな、と思った。

 

ひるがえって、日本にも、もちろん、戦時中には捕虜収容所があった、第一次世界大戦時にあった、徳島県鳴門市大麻町の捕虜収容所には、ドイツ人の捕虜が収容されていて、かなり自由な生活が認められていたという、その自由な生活の中でドイツ人の捕虜が取り組んだことの一つに、音楽活動があり、彼らが日本で初めてベートーベンの交響曲第九番を演奏したという、地元の住民との交流も深かったようで、戦争が終わってドイツに帰国した後にも、元捕虜と住民の交流があったらしい。

 

日本の捕虜収容所、などと言うと、筆者は、第二次世界大戦中の特高のイメージが強かったので、鳴門市大麻町の捕虜収容所のことを知った時には、日本でも戦争捕虜の取り扱いについては、捕虜の人権を尊重した扱いがなされていたのであったか、と、実は意外感に打たれたのであった。まあ、第一次世界大戦と、第二次世界大戦、という違もあり、大麻町以外の捕虜収容所のことは、詳しいわけでもないので、この収容所については、と付け加えざるを得ないのであるが。

 

さて、映画のほうはどうであるか。映画のストーリーでは、最後は収容所内の事件も無事に解決する、解決するのは良いのだが、筆者は、その解決の仕方に、若干の残酷さを感じてしまった。捕虜収容所の話とはいえ、やはり、戦争を扱った映画であり、戦争における残酷さをこの映画でも避けて通ることはできなかった。まあ、”犯人“ は、その運命を受けるに相応しい残酷なことを当人もしており、当然といえば当然の報いでもあるのだが、目には目を、って感じでした。

 

ラスト、収容棟の窓に、MERRY XMAS の文字が浮かぶ。ビリー・ワイルダーらしいエンディングだと思ったのだが、筆者は、この映画では素直にMERRY XMAS、とお祝いのハッピーな余韻を感じることができなかった、やはり、戦争映画だった、この映画は……面白い映画ではあるんだけれどね。