ジョセフ・コットンとオーソン・ウェルズが共演している、古い映画だ、モノクロだ、ジョセフ・コットンもオーソン・ウェルズもほとんどの人が知らないと思うが、いい映画だ、面白い、ここではいい映画を発掘するというのが目的だ、考古学者は古代の遺跡を発掘する、古代、っていうほど古くはない、が、モノクロ、っていうだけで映画としては十分古い、が価値ある映画だ、今でも鑑賞に十分耐えうる、ということで、今回は、「第三の男」を紹介。
舞台は第二次世界大戦終結直後のオーストリア、ウィーン、この時代設定をきいただけでもう十分古いね、ジョセフ・コットン扮する作家ホリー・マーチンスとオーソン・ウェルズ扮するハリー・ライムは親友で、ハリーから仕事を手伝ってほしいという連絡を受けて、ホリーはオーストリアにやってきてハリーを訪ねる、そこから、この物語は展開する、ミステリーだ。
映画の中でホリー・マーチンスは冴えない、とことん、善人なんだけどどうにもパッとしない、そんな役回り、少なからず思っていた女性にも見事にふられる、それは、この映画のラストシーンで見届けてほしい、完璧な振られ方、といいたい。一方、ハリー・ライムは悪人、とことん悪い奴、どのくらい悪い奴かはやはり映画を見てほしい。このとことん悪い奴のハリーをめぐって、ホリーとハリーの恋人と警部とがあれやこれや駆け引きもあり、サプライズもあり…で、物語はクライマックス、ウィーンの街の地下を張り巡らしている下水道へ、やっぱり、見始めるとここまで夢中で見てしまう。
音楽もいい、オープニングからラストまで、流れるこの映画のテーマ曲、一度聴いたら頭から離れないで、いつまでもいつまでも、映画が終わった後も、頭の中で繰り返し、繰り返し奏でられる、そのくらいいい曲で、お気に入りだった、いや、今でもお気に入り。最初はマンドリンだと思っていた、が、違った、ツィター(チター)という楽器で演奏されていた、オーストリアなどで使用される弦楽器で日本の琴に似ている、琴よりもサイズは短い。このテーマ曲、本当にいつまでも耳に残る、いい曲なんだ、この曲も映画を見てぜひ聴いてほしい。
オーストリアを旅した時のこと、この映画の撮影スポットを二か所訪れた、どうしても行ってみたかった、まあ、ミーハー的。ホリーとハリーが遊園地の観覧車に乗るんだけれど、その観覧車はまだ健在で、実際に乗ってみた、ハリーは観覧車に乗って、観覧車から見下ろす街中の人々を見て、ある意味、見下すようなセリフを言うんだ、さらに、ホリーは一瞬突き落とされるんじゃないか、っていう不安に駆られたりしてね。映画のシーンを思い浮かべながら、観覧車から‘下界’を覗いてみました。
二つ目は、ラストシーンにでてくる並木道、実際は同じような並木道がいくつもあって、どれが映画で撮影に使われた道か結局はっきりはわからなかったけれど、ここかな、いや、こっちかな、なんて、道を探していた、最後は、一番映画のシーンと似ているのはこの道のこの場所か、と結論して、しっかり写真に収めた。この並木道はウィーン中央墓地の中の道の一つで、すぐ近くには、ベートーベンやらブラームスやらヨハン・シュトラウスといった大音楽家のお墓がずらりと並んでいる、こちらの方がみごたえがあった。
こんな風に、この映画にはまっていた、お気に入りの映画、一つ心残りは、ウィーンの街の地下を張り巡らしている下水道を訪れていないこと、下水道の中も観光できるらしい。
さて、今夜は、この映画のテーマ音楽を聴きながら、蒸し暑い夜を過ごそうかな、ウィーンの夜も今頃、やっぱり蒸し暑いのかしら。
#第三の男