オーソン・ウェルズの監督デビュー作品でもあり、“世界映画史上のベストワンとして高く評価されている” 映画、とも言われている。さらに、オーソン・ウェルズ演じる新聞王ケーンは、実在するウィリアム・ランドルフ・ハーストという人物をモデルにしており、彼は実際に ”新聞王“ と呼ばれていたという、そのため、この実在する新聞王ハーストによって、映画「市民ケーン」は上映妨害運動が展開され、アカデミー賞にも9部門でノミネートされていたのに、実際、受賞したのは脚本賞だけ、という。ハーストという人は自分がモデルにされたことに、ずいぶん激怒した、と想像できる。
では、実際の内容はどうなのか、モデルにされた本人が、上映妨害したくなるような、そんな内容なのか。映画の前半は、養子に出され、25歳になって莫大な財産を相続したケーンが、新聞社の経営をはじめ、大成功をおさめ、人生の勢いに乗り、大統領の姪と結婚までして、ついには、ニューヨーク州知事を目指し、州知事選に打ってでる、という活躍ぶり、そんなケーンの成功ぶりを、どちらかというと、明るく、活発に描いているのが前半だ、映画なので、多少大袈裟に脚色された部分も無きにしもあらずだったかもしれない、が、モデルにされた人物が映画の上映を妨害したくなるような描かれ方では決してなかったと思う。
では実在のモデルが、上映妨害したくなるほど気に入らなかったのは映画の後半か、映画の後半では、愛人のいることがライバルにばれて、それをネタに脅されて選挙に負ける、そのせいもあり、大統領の娘の奥さんとは離婚に追い込まれる、オペラ歌手を目指していた、元愛人だった新しい妻のために、ずいぶん立派なオペラハウスを作ってやるのだが、奥さんのオペラ歌手としての実力不足のために、周囲の者からは笑われる、とうとうニューヨークから脱出、郊外に巨大な屋敷を建てるも、使用人とケーンと奥さんだけという、超巨大な屋敷にたった二人だけの生活、耐えきれなくなった奥さんには出ていかれる‥‥と散々な目に合う、巨万の富があっても、金だけでは幸せになれない、という見本のような生き方である。おそらく、こういった映画後半のケーンの描かれ方が、実在の本人には我慢ならなかったところではないのか、と筆者は考える。
この映画では “Rosebud (バラのつぼみ)” という言葉が、最後まで謎として、登場する、ケーンが死の間際につぶやいたこの言葉は何を意味するのか、と。何を意味しているのかは映画を最後まで見てほしい。映画「市民ケーン」と言えば “Rosebud (バラのつぼみ)” といって、映画好きならば、だれもがすぐに連想できるほどの有名なセリフであり、人気シリーズであったTVドラマ「刑事コロンボ」の中の「攻撃命令」という回でもこの言葉はでてきて、この言葉はドラマの中ではかなり重要な鍵となっている。もしかしたら、この “Rosebud(バラのつぼみ)” の秘密が、実在の新聞王ハーストは気に入らなかったのだろうか、センチメンタルすぎる、とか、触れてほしくない琴線にはからずも触れてしまったとか…、これは筆者の勝手な想像ですが。
確かに、この映画で ”Rosebud(バラのつぼみ)“ の秘密は意外だった、が、ストーリーは後半の郊外に建築した邸宅のあたりまでくると、人間的な凋落ぶりに、ケーンに憐れみすら感じてしまう、だれもがうらやむ億万長者なのに。結局、お金じゃないよ、お金があっても幸せになれるとは限らないよ、お金ですべての夢がかなうわけではないよ、大切なものはほかにある…という、素朴な真実を訴えたかったのか。
というわけで、最初にも書いたように、この映画が “映画史上のベストワンとして高く評価されている” にもかかわらず、上映妨害にあって、アカデミー賞9部門ノミネートされたけれど、一部門のみの受賞にとどまったという事実をもってして、ストーリー的にも、劇中で試みられている、素晴らしいざまざまなテクニカル的にも “悪くはなかった” のだけれど、 ”残念な映画” にしたいと思う。
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