Kororon 映画について語るBlog

映画を語りつくす blog ☆ いい映画も、残念な映画も、好きな映画に、無理(?) な映画も、時に、ドラマも

映画 北北西に進路を取れ   ケーリー・グラント 主演/    アルフレッド・ヒッチコック 監督:      悪くないけれど残念な映画

 

 

北北西に進路を取れ(字幕版)

 

ヒッチコックの作品にはヘンリー・フォンダ主演の映画「間違えられた男」という作品もあるのであるが、この映画「北北西に進路を取れ」も、やはり、或る意味 ”間違えられた男“ というのが、ことの始まりであり、前者は実話をもとにしたストーリーであるようだが、後者、ここで取り上げる映画「北北西に進路を取れ」は、フィクションの物語であり、ケーリー・グラント演じる広告会社の重役ソーンヒルが、自分でも気づかない或るちょっとした偶然のいたずらから、スパイのキャプランという男と間違えられてしまい、とんでもない災難と冒険へと駆り出されるという物語である。

 

まず、冒頭の ”間違えられ方” がうまい、さりげなく、ごくごく自然な成り行き、これではちょっと防ぎようがない、というくらいの偶然性、ソーンヒルは実に災難、運が悪い、と言わざるを得ない。どこのどんなシーンであるかは、映画を観て確かめてほしい。この映画の見せ場はいくつもあるのだが、やはり、シカゴの郊外の広大な平原で、軽飛行機に襲われ銃撃までされるというシーン、銃撃の迫力は今一つと感じるのだが、飛行機を背にして、ソーンヒルが走る、有名なシーンはやはり迫力があり、迫力には今一つだと思った銃撃シーンも、あのシーンで機関銃を乱射するのは、あの道路が一般の車やトラックも時には通行するということを考えるならば、あのくらいの銃撃が限度であったか、とうなずけたりもする。

 

やはり、ハラハラドキドキして面白くなってくるのは、後半、ソーンヒルが恋に落ちる謎の女性の正体が明らかにされてからの展開であり、ソーンヒルによる自身のイニシャル入りマッチの使い方であるとか、これも秀逸だと感じる、また、ラストのサウスダコタ州のラシュモア山国立記念公園の岩に刻まれた巨大な大統領の顔での、逃亡、対決シーンであり、こういったところは、さすがヒッチコック、と思わずにはいられないサスペンスであった。

 

が、しかし、映画全編を通して、この謎の女性や、彼女を支援している教授、と呼ばれる男性が一体全体何という組織に所属しているかは明かされない、FBIでもCIAでもいいのだが、ヒッチコックはそこのところははっきりさせない、そんなところが、なんとなく、リアリティに欠け、サスペンス感を若干そぐような気がしてならない。さらに、この映画は主人公ソーンヒルと謎の女性が恋に落ちないとどうにも展開していかないストーリであるのだが、その肝心ともいえる出会い、親しくなっていく過程、がどうも不自然、唐突感が否めず、その点において、映画に感情移入していくことを妨げる。

 

舞台はニューヨークからシカゴへ、シカゴからサウスダコタへ、と移動してゆく、タイトルにでてくる ”北北西“ という方角とは何の関係もない舞台の移動、 ”North by northwest” という方位は実際には存在しないという。ある説によると、このタイトルはシェイクスピア戯曲「ハムレット」の一節からきているのではないか、と言われているようだ、曰く ”私は北北西の風の時に限って理性を失ってしまう。( I am but mad north-moth-west …….)”と。確かに、主人公ソーンヒルは理性を失ったかのように、謎の女性に恋をして、理性を失ったかのように、彼女のために命を懸けて、危険の真っただ中に飛んでゆく、可能性としては、一番ありそうな説であるな、と筆者は感じる。

 

そんなこんなで、みどころは数ある、面白いサスペンス映画なのであるが、先に触れたいくつかの点は残念であり、ゆえに、悪くないけれど残念な映画としたい。この主人公、謎の女性と出会う前にも、酒を無理やり飲まされ、ベロンベロンに酔っぱらい、理性もなくして、今にも車ごと海に落とされて命を落とすところであった、やはりこの映画、サスペンス溢れるスパイ映画であると同時に、”理性をなくした“ 男が、恋する女性のため、危険に突き進み、恋を成熟させる、といった映画としてみるのも、ありかもしれないと思うのでした。