今週のお題「最近見た映画」
この映画を見る前には、この映画はきっと ”悪くないけれど残念な映画“ に分類することになるだろうな、と思っていた、何故って、古すぎる映画だ、古すぎる西部劇だ、邦題のタイトルはともかく、オリジナルタイトル、「My Darling Clementine」は恋愛映画を連想させて、西部の恋愛映画? 上の写真のツーショットを見ても……など、ちょっと首を傾げたりしていた。
が、邦題は「荒野の決闘」だ、OK牧場の決闘 を題材にしている、監督は西部劇の名監督、ジョン・フォードであり、後で知ったが ”西部劇の神様“ とも呼ばれていたようだ、ということで、観た。そして、前回紹介した「ローグ・ワン」と同じパターンで、最初の懸念を吹き飛ばして、この映画も良かった、いい映画、もしかして、名作、と思った次第。
映画は淡々と進む、実在の人物、ワイアット・アープvs.クラントン一家、ワイアット・アープの兄弟を殺害し、彼の牛を盗んだ一家、の対立の構図で進む、が、この対立ばかりが物語の流れで語られるのではなく、映画では、登場人物の人間関係を中心に、ワイアット・アープが行きがかり上、保安官をすることになるトゥームストンの町の様子などが語られ、決闘のシーンは実は映画のラストに控えめに見せるだけだ。でも、そこがいい。
アクションがないわけではない、ドク・ホリデーがガードマンとして乗り込んだ、金塊を運ぶ馬車が猛スピードで馬を駆って疾走していくシーンは迫力満点の超スピード感、馬車の車輪がもぎ取れるんじゃないか、と、観ているほうがハラハラするほどの速さ、このあたりは、チャールトン・ヘストン主演の映画「ベン・ハー」の馬にひかせる戦車競走を彷彿とさせ、さらに、その「ベン・ハー」の戦車競走をパロディしたろうと思われるスター・ウォーズ・シリーズの「エピソード1/ ファントムメナス」での幼きアナキンが出場しているポッド・レースを思い起こさせる、どちらの場合も、ジョン・フォードが原点であったか、とうなずく。
また、ワイアット・アープがいよいよ、クラントン一家との決闘に赴く、クラントン一家がワイアット・アープを待ち受けている場所がOK牧場だ。そして、いざ決闘となった時に、彼のもとには助っ人として一緒に行くよ、という仲間が集ってくる、このあたり、映画「真昼の決闘」で、保安官をしていた町の住民、友であり仲間であると思っていた人々から見捨てられ、たった一人でならず者との対決に挑まなければならなかった、ゲーリー・クーパーの保安官とはなんていう違い、と、ワイアット・アープの幸せを思わずにはいられなかった。
この映画は西部劇である、西部劇と聞くと、どうしても、拳銃での撃ち合いがメインであるのだろう、とか、決闘シーンは期待できるのか、であるとか、ついイメージしてしまいがちであるが、この映画をそんな先入観をもって観てはいけない。この映画は、人間ドラマ、としてみてほしい、ヘンリー・フォンダ演じるワイアット・アープ保安官は、寡黙ながら魅力的な保安官だ、もちろん恋愛映画ではないけれど、あれ、もしかして三角関係?なんて、思える場面もある、ワイアット・アープの早撃ちにも驚く‥‥などなど、静かな見どころ満載の映画。
こうして映画を観終わってみると、映画のタイトルとしては邦題の「荒野の決闘」よりは、オリジナルの「My Darling Clementine」(いとしのクレメンタイン)のほうが、もしかしたら、この映画にはあっているのかしら、と思えてくる、さて、どう思いますか? ということで、この映画、お勧めの映画、映画の古さにひるまずに、一度、是非、どうぞ。