鳥が人間を襲う、そんな取りを考えることができるだろうか、熊やら、イノシシやら、どう猛な犬と科などが、人間を襲ったというニュースなら聞いたことがある、が、鳥が人を襲った、というニュースはめったに聞かない。今回は、そんな、現実の世界ではめったに聞かないような話だが、映画の中では思いっきり人間を襲って、人間を恐怖に陥れる鳥たちの映画について語ろうと思う。
この映画では、ある日、突然、鳥が人間を襲い始める、何故か、なにが原因で、と普通は思うが、鳥が人間を襲うようになった理由は映画の中では語られることはない、原因不明のまま人間が襲われ死者も、けが人もでる。理由が語られないので、人間を襲う鳥は一層不気味さを増す、わけもなく人が殺されていく不条理の世界、ヒッチコックが映画の中で描いているのはそんな世界、そんな不条理な世界の中で、人間の心理の葛藤が描かれる。
この映画で描かれる鳥たちは明確に目標を定めて人間を襲って来るようにも見える、時にはただ、人間がそこにいるから、鳥を脅かすような行為をするから襲ってくる、という場合も描かれる、が、この映画を射ていると、鳥たちは立派に、知性をもって人間を襲てくるように思わせられる。
普段、生活の中で私たちはカラスに悩まされることがないだろうか。カラスは頭がいい、例えば、ごみ収集の日、所定の位置にごみを出しておく、ゴミの出し方が甘かったりすると、たちまちカラスの餌食となり、あたり一面ごみが散乱、泣きながら掃除する、なんていう羽目にならないだろか。時に、カラスは、ごみ収集日の日や時間を覚えていて、その日にち、時間になると集まってくるのか、なんて思ったりする、電線や、屋根にカラスが群れになって止まっているのを見た時は、ギョッとして、思わず映画「鳥」を思い出したこともある、もっともカラスたちの目当ては人間ではなくてゴミだけれど。
手塚治虫は「鳥人大系」という漫画の中で、知性を持った鳥たちが人類を駆逐して、地球の支配者となる、というストーリーを描いた、手塚の漫画では、物語の最後に鳥人が誕生した秘密が明かされる、少なくも読者は鳥が知性を持つようになった理由を知り、ある意味最後には安堵する、そうなんだ、そうだったか、とわかれば、わからないままにさせられている不安、気持ち悪さ、は少なくとも払拭される。
また、鳥は恐竜の子孫ではないか、NHKスペシャル恐竜超世界という番組では、恐竜に羽毛のあることが発見されて、体温を維持でき、そのおかげで活動が活発になり、活動範囲も広がり、知性すら持つようになったといっている。あくまでも想像の域を出ないが、そんな恐竜の子孫の鳥類ならば、もしかしたら鳥にも知性が宿っている、と考えるのは途方もないことであろうか。
「ファーブル昆虫記」を著したフランスの博物学者ファーブルは、ある種の昆虫はインテリジェンスをもっている、と主張したそうだ、昆虫に知性があるなら鳥にも知性があっても…‥。
話が映画からそれてしまった、再び映画に戻ろう。映画の中で鳥たちはとにかく人間を襲う、襲って、襲って襲いまくる、大袈裟かしら。ただ、そんな中で、かごの中で飼われているカナリアだったかな、インコだったかな、が、出てくるのだが、最後までおとなしく、かわいらしい鳥であり続け、ある意味、見ている私たちをホットさせる。ヒッチコックは凶暴化した野生の鳥たちを描いておきながら、かごの中の鳥はあくまでもおとなし、かごの鳥として描いた。
自由な鳥たちは独裁者人間の支配にとうとう反旗を翻し、その復讐を始めた、何しろ、人間は彼らの仲間を食用として美味だ、と言って食べているしね、一方、かごの中で自由や外の世界を知らず人間に飼われていた鳥たちは‥‥、なんだか、実際の世の中にもありそうな話になってくる。この「鳥」という話には原作の小説があるようだ、原作を読めばもしかしたら答えはあるのかしら。
とにかくも、この映画でヒッチコックは見る人を怖がらせてくれる、怪談ではないが、この映画を見て背筋をぞくっとさせて、涼をとってみてはいかがでしょうか、余韻で席を立ちたくないというよりも、ぞくっと凍り付いて動けなくなる、そんない怖いと感じられれば幸い。
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