今週のお題「傘」
梅雨の季節になってきた、傘を持ち歩かなくてはいけないし、雨が降ればささなくては、でも、荷物を持っていたりすると案外邪魔なんだ、晴れて日差しが強くなってきた時も同じだ、日傘をさしているのだけれど、どうしても必要なんだが、やっぱり買い物したりして荷物が増えてくると邪魔に感じるときは多い、何しろずいぶん日傘はなくしている、今の日傘でもう何本目かな‥‥というくらい、今度こそ失くさないように、としっかり持ち歩いていたら、今度は、日傘の骨がおかしくなってきた、形が変形している!いずれ、また新しい日傘を買わなくちゃいけない日が来ることは目に見えている、やれやれ、という感じ。
なので、日傘、雨傘、ではなく、失くすことも邪魔になることもない、もっと大きくてどっしりとした傘の話をしたい…‥一体、どんな傘なの?それは、赤くて、大きくて、いつもまっすぐに、直立不動のように立っている、なんだか、なぞなぞみたいだけれど、茶道を経験したことのある人はピンとくるかもしれない。
茶道、茶の湯というのはたいてい畳の間で行われる、というイメージかもしれない、けれど、茶道には、茶室の外でお茶をたてる、というお点前、お茶のたて方もある、茶道の言葉で、立礼と書いて、‘りゅうれい’という。茶室の外だから、椅子に座ってお茶をいただく、正座しなくていいんだよ。立礼棚というのがあって、大きな長方形のテーブルみたいなものなんだね、外でお茶をたてるときには、この立礼棚にお釜やその他、茶道具、---建水、柄杓、蓋置など—-を置いて、椅子に座って亭主はお茶をたてる、お客さんは椅子に座ってお茶を飲む。まあ、他にも茶箱、というお点前もあるけれど、これはまた別の話。
この時に、お茶席に立ててあるんだ、大きな赤い和の傘が、傘を支ええる支柱には、たいてい、竹筒に草花が生けてある。いつも感じることだけれど、お茶席に座ってお茶席全体を見渡してみると、その全体のトーンというのは、案外おとなしいんだよね、もともと、茶道は“わび、さび”をよしとするものであるし。ところが、この、大きな赤い傘が一つあるだけで、お茶席のイメージがとても明るくなると思う、つまり、華やかに、赤、という色は情熱的な色でもあるしね。落ち着いた、静かな色彩の中のワンポイント、という感じ。
それほど強烈な色彩でも、茶室を飛び出して茶室の外の大きな空間でお茶をたてるときは、このワンポイントの派手さがいいのかな、と思ったりする。
こんな話もある、
“豊臣秀吉が主催して行われた北野大茶湯の野点で、‘へちかん’という人が約2,7メートルもする大きな朱塗りの大傘を立てて茶席をもうけたところ、とても人目を惹き、秀吉も非常に驚き、かつ喜んだ、という話。 「茶話指月集」久須見疎安 より”
赤い大傘の効果!
そして、現在でも、立礼でお茶席を設けるときには、必ずといっていいほど、この、赤い大傘、野点傘、がお茶席にはディスプレイとして置かれている、この傘なら邪魔どころか、お茶席にはなくてはならない傘、といえる。傘にもいろいろあるね、こんな傘なら、置き忘れることも絶対にないしね!