迫力が違う、この映画は、出演者の名前が次々と出てくるオープニングから、音楽の迫力、そして、ストーリーが始まると、七人の侍の一人となる侍達、剣客の技の迫力、7人そろって村へ向かう ‘七人の侍’ の迫力、
7人のうち一人だけ侍に憧れる農民が混ざっているが、その男のがむしゃらな迫力、村を襲ってくる悪党、野武士たちの悪人ぶりとその迫力、迎え撃つ七人の侍と農民たちの迫力、そして、ラスト、激しく降る雨の中で、七人の侍、野武士、農民たちが入り乱れて激しく戦い抜く決戦の迫力‥‥と、映画全編を通して息をつく暇のないほどの迫力で、最後まで観せる。
黒澤明監督のあまりにも有名な一本、「七人の侍」。‘息つく暇のないほど’ と書いたが、実際の映画では迫力ある戦闘場面の合間に、ユーモアあふれるシーンあり、ロマンスあり、登場人物の苦悩あり、で緩急つけながらストーリーは展開していく、ここらへんはストーリーテラーとしての黒澤監督の才能がいかんなく発揮される。
後にハリウッドで「荒野の七人」という西部劇で、ユル・ブリンナー、スティーブ・マックイーン、チャールズ・ブロンソン、ジェームス・コバーン、ロバート・ボーンといったそうそうたるメンバーをそろえて、リメイクされている。オリジナルの「七人の侍」も侍、農民双方にそうそうたるメンバーをそろえているが、何しろ古い映画なので私の知る限りで ‘そうそうたる’ とわかるのは、三船敏郎、志村喬、千秋実、藤原釜足、くらい、女優に至っては全然わかっていない、名前を揚げられなかった ‘そうそうたる’ 役者さん、ごめんなさい。
また、仲代達也と宇津井健がノンクレジットの街を歩く浪人役で出ているらしい、失礼だけれど、クスッと可笑しい、どれだけ若かったのか。
三船敏郎演じる菊千代の、こういっては何だが、めちゃくちゃな性格、行動、がこの映画の評価を一層押し上げ、5分の休憩をはさんで上映されるほどの長編映画に最後まで飽きさせることなく観客を釘付けにし、世界の中でも高評価をこの映画に与えている一因ではないか。めちゃくちゃだよね、菊千代ってやっぱり、それなりの悩みも抱えているのだが。
リメイク版「荒野の七人」にはいないんだよね、菊千代みたいなキャラクターが。リーダー役はユル・ブリンナー自らがきめる、リーダーのサポート役にはスティーブ・マックイーン、ロマンスを担う一番若年者の役にはホルスト・ブッフホルツという、私には全く未知だった役者を当てている、他の剣客たちにも上に記した ‘そうそうたる’ 役者が当たっているのだが、不幸なことに、アメリカには三船敏郎はいなかった。
菊千代がエネルギッシュに暴れまわる、勝手する、暴走する、アクションは大迫力、が、ユーモアもたっぷり、人懐こさも感じる、それでいて、正義感でもある‥‥こんな役を演じられる三船敏郎という役者が日本にいたことはありがたくも素晴らしいことで、もう一人の鬼才、黒澤明とのタッグによって、素晴らしく上質なエンタテイメントが生まれたといっても過言ではない。
「七人の侍」の魅力は、語っても、語っても、そう簡単に語りつくせるものではない、映画そのものも長いけれど、映画を観終わった後の映画談義も延々と長くなる思われる映画、登場する役者の数も多いから最初のオープニングロールも長かった、映画自体の息もながい、1954年公開だから66年も前の映画、なのに、その人気はいまだ衰えず…‥と長いものづくしのこの映画、まだ秋の夜長には早いけれど、暑い夏の夜、迫力に満ちた「七人の侍」をみて、夏の暑さを吹き飛ばしてほしい!