ルキノ・ヴィスコンティの映画「山猫」では、イタリア統一戦争をきっかけとして、没落し、消滅していく貴族の社会と、貴族に変わって台頭していくであろう新しい世代が、交錯する時代を描く。没落していく貴族世界の代表をバート・ランカスターが、新しく台頭していく世界の代表をアラン・ドロンがそれぞれ演じる。アメリカとフランスの2大スターの華麗な共演が観ることのできる映画。もっとも、アラン・ドロンはこの時のギャラがバート・ランカスターに比べて低い、ということでヴィスコンティにクレームをしたところ、以後、ヴィスコンティとドロンは不仲になってしまった、ということらしい。同じくヴィスコンティの映画「若者のすべて」で、あれだけ美貌のアラン・ドロンを見せてくれたヴィスコンティなのに、以後ヴィスコンティの作品にアラン・ドロンは出演していない、もったいない(?)かぎり・・・。
さて、映画「山猫」では、没落していくのであるが、華麗で、華やか、優雅でもある貴族社会がたっぷりと描かれる。特に、後半、イタリアはシチリアでのガンジー宮殿でロケがなされた舞踏会のシーンは、貴族が権勢を振るっていた頃の、華やかさを見せてくれるのである。ただ、映画で描かれているのが、没落していく貴族たちの最後の輝きであると理解するとき、その華麗さは死にゆく者が、最後にその力を振り絞って、一瞬見せてくれる、生命力の輝き・・・と思わざるを得ない。
映画「山猫」で舞踏会が行われた、このシチリアのガンジー宮殿は、実のところ個人の所有する宮殿であり、今も、イタリア貴族の末裔が、結構莫大な私財を投じて、修復、改修をしたりしながら、この宮殿を守っている。貴族も現代の世を生き延びて、代々受け継がれる城や宮殿を守っていくのは随分苦労のいることらしい。また、アラン・ドロンは5年前にこの映画「山猫」がロケされた、ガンジー宮殿を訪れた際、ガンジー宮殿の美しさに感動し、もしかしたら、映画ロケの時の思い出なども思い出されたのか、涙を流していたという。
そんなアラン・ドロンであるが、映画「山猫」では、バート・ランカスター演じる貴族、サリーナ侯爵の甥、タンクレディを演じている。バート・ランカスター演じるサリーナ侯爵は、激動するイタリア社会にあって、世渡りが下手で、自身の貴族という殻を打ち破ることはできず、時代の流れとともに滅びゆく道を選ぶ。一方、甥のタンクレディのほうは、映画の当初は、イタリア統一運動の旗手、ガリバルディの軍隊に合流していて、ガリバルディ将軍と懇意にもしていた、が、新しい国王の政権が誕生すれば、すぐにガリバルディの元を離れ、政府軍に合流する。時勢、機を見るのに素早く、伯父のサリーナ侯爵とは正反対、と言ったところだが、侯爵はこの甥を愛している。
また、タンクレディと恋人のアンジェリカが二人して、人目を忍び、サリーナ侯爵の屋敷の中を、あちらの部屋、こちらの部屋へと移りながら、二人きりの時を楽しむシーンでは、当時の貴族の屋敷の広さを実感させてくれる。また、戦時中なのに、馬車を連ねてピクニックに行く優雅さ、そんなシーンを始め、貴族の生活とはかくあるものであったか、と思わせてくれる映像で溢れる。
また、この映画と合わせてNHK「貴族からの招待状」という番組を見ることができるならば、過去、及び、現在にも存続するイタリアの貴族の生活や、苦労をうかがい知ることができるのではないかと思う。映画「山猫」は、そんなイタリア貴族について知るのには、いい映画かもしれない。ただ、少々長い、ヴィスコンティの耽美的世界が気に入ればいいかもしれない、そうでなければ、もしかしたら、長いだけあって、少々退屈を感じるかもしれない…。ということで、久しぶりに、悪くないけれど、残念な映画としようと思う。
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