Kororon 映画について語るBlog

映画を語りつくす blog ☆ いい映画も、残念な映画も、好きな映画に、無理(?) な映画も、時に、ドラマも

アパートの鍵貸します  ジャック・レモン/  シャーリー・マクレーン 主演   ビリー・ワイルダー監督 : 悪くないけれど残念な映画

 

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ビリー・ワイルダー監督の映画、この映画はアカデミー賞作品賞、監督賞をはじめ数々の賞をとっている、面白い作品で、好きな映画なのである‥‥確かに面白い、いい作品‥‥いい作品である、が…....。 この、が…に続くところから本日は語りたいと思う。

 

この映画は1960年に公開された映画だ、60年前の映画であり、もっと古い映画もこのブログでは紹介してきたのだが、この映画は設定が設定だけにオープニングにまず時代を感じた、ジャック・レモン扮する主人公C・C・バクスターは保険会社の社員であり、オープニングは彼がその保険会社の自分のデスクで仕事をしているところが映し出される、大きな広い部屋に学校の教室に並ぶ机のごとくいくつものデスクが行儀よく並べられて、社員が勉強する生徒のごとく机に向かっている、まずこのオフィス形態に時代を感じた、バクスターがめくるスケジュールメモ、60年前の映画なのだ、が、せめて社員のデスクにパソコンが一台づつでもあればな、と思ってしまった、まずオープニングから映画の世界から引いてしまう。

 

続いて、バクスターのアパートに移り、バクスターがテレビを見る、テレビで放映されているのがグレタ・ガルボの「グランド・ホテル」であるとか、ジョン・ウェインの「駅馬車」である、というのはいい感じ、しかし、バクスターがチャンネルを切り替えるその方法はまたしても時代を感じてしまう、が、60年前の映画なのだ。

これらは、監督のせいでも何でもないのだが、いかんせん、われわれの日常の進歩は早い、こんな些細なことでも映画の魅力をそぐ要因となってしまう、と感じる。

 

ストーリーは展開していく、バクスターが出世のために自分のアパートをどんなふうに利用しているかが分かってくる、まあ、バクスターのアイデアなのだけれど、どうも、この方法にバクスターの悲哀を感じすぎて、また、出世のためとはいえそこまでして取り入りたいか、なんて思って、ここら辺はバクスターに共感できないままストーリーは展開していく。

 

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だが、シャーリー・マクレーンが登場するあたりから少しずつ変わってくる、まず、シャーリー・マクレーンは可愛い、ショートカットがとてもよく似合っている、そして、シャーリー・マクレーン演じるフランが睡眠薬を飲みすぎるあたりから面白くなってくる、バクスターのアパートで、バクスターとフランの二人のシーンが一番いい、ドクターをはじめアパートの住人達もいい、ここはビリー・ワイルダー監督腕の見せどころ、さすが、と思わせるシーンが続く、テニスのラケットでスパゲッティの水を切るなんていう有名なシーンもある、このシーンは一番よく覚えている。

 

そして、ラストはさらにいい、というわけで、この映画の見どころ、この映画のいいところは、フランがバクスターのアパートに転がり込むことになった映画後半であると言いたい、この後半こそにこの映画が作品賞をとった理由があると考える、もっとも、映画の前半がなければ、フランがバクスターのアパートに転がり込むストーリー展開に持っていけないのも事実。バクスターは出世にとらわれすぎているように描かれているが、結局いい人、優しい人で、そんなところがバクスターの魅力となる。

 

アパートの鍵貸します」、いい映画、好きな映画、ラストもいい、余韻も感じる、ワイルダーは冴えている、アカデミー賞だってとっている、といいことずくめなのだが、上に述べた理由によって、本当に残念だけれど ‘悪くないけれど、残念な映画’ としようと思う。

ビリー・ワイルダー