この映画はロードムービーだ、ロードムービーにはさまざまなペアがあって、名作も数限りなくあるが、このコンビもいい、メインなストーリーは親が離婚したために、現在は母親と離れて暮らす少年がはるばる母親に会いに行く、割とよくある話、母親を一目見ることはかなった、様々な事情により、少年は再び家路をもどって、現在のわが家へ帰ってくる、といった話、たったそれだけだ、やっぱり、どこかで聞いたことのあるストーリーか。が、しかし、この割とありふれたストーリーが、監督、北野武の手にかかると、実に魅力的でステキ、軽やかで、爽やかでもあるストーリーに変身し、観終わった後、暖かい、いい気分になることができる、北野マジック!、かしら?
少年の相棒になるのは監督自身が演じる ‘ヘンな親父’ だ、定職もないのか、少年と一緒に保護者のごとく、母親のもとへと一緒に旅する、その道中がいい、かなりメチャクチャしながらちょっと気弱そうな少年を小突いたり、励ましたり、怒ったり、一緒に遊んだり、旅は進んでいく、一緒に旅をているうちに、このヘンな親父も根はやさしい親父であるとわかってくる、何しろ、奥さんに言われたからと言っても何の責任もない子供のために遠くに暮らしている母親のところまで、一緒に付き合って旅しているわけで、やっぱり、優しい変わり者の親父、っていう感じかな、が、最初はそうは見えない描き方だ、荒っぽくてね。
母親の家までたどり着いて、帰りの旅路では、たけし軍団のギャグが炸裂、沈んでいる少年を元気づけるために北野監督が選んだ方法はこれか、と思った、強烈なインパクトがあった、一風変わったコンビとはいえ、往路は、少年と親父の交流、事件、アクシデントを積み上げていく定石通りの流れと運び、定石通りとはいえ監督の腕はひかり、観ている観客は北野監督の世界へと引き込まれる、復路も同じ調子でストーリーが展開していっても、この映画の非凡さを損なうことはなかったであろうと思うのだが、監督は軍団に暴れさせた。
何故か、全くの勝手な解釈で監督の意図とは外れているかもしれないのだが、思うに、監督はこのまままじめにストーリーを展開していくことに、照れてしまったのではないか、と考える、映画のタイトル「菊次郎の夏」の ”菊次郎“ というのは監督の父親の実際の名前である、映画の中では少年と一緒に旅している ‘ヘンな親父’ が ’菊次郎‘ であろう、映画の中の往路において ’菊次郎‘ は ’ヘンな親父‘ から ’優しいいいおじさん‘ に変身する、映画のラストでも ’いいおじさん‘ として少年と別れていく、なので、復路でこの ’菊次郎さん‘ が描かれるとしたらおそらく少年にとっていいおじさんとしてのエピソードを描くしかなかった、復路ではさらに、少年と ’いいおじさん‘ とのエピソードを見せなければいけない、菊次郎という名前からして映画の中のおじさんと自分の父親のイメージはだぶる、そこで、監督はたけし軍団にギャグを連発させて、
映画の流れをぶっちぎって照れ隠しをした…‥‥と考える、外れているだろう、それとも、あたらずといえども遠からず?
さて、この映画では音楽も素晴らしい、優しく美しいメロディーは映画全体に流れている、久石譲作曲の「Summer」お気に入りだ、彼は北野監督作品の他の作品でも音楽を担当している、彼の「Summer」もこの作品を魅力的にしている要因のひとつだ、かつて、この「Summer」をパワーポインドで作ったスライドショーのBGMに使いたくて試みたことがあったが、著作権の壁にぶつかって断念したことがある、とても残念だった、使いたかったな。
「菊次郎の夏」、夏にぴったりのタイトル、優しく、とてもいい映画だ、この暑い夏にぜひどうぞ!
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