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ガス燈   イングリット・バーグマン/  シャルル・ボワイエ 主演:    悪くないけれど残念な映画

ガス燈(字幕版)

 

ミステリ、サスペンスというよりは、心理映画として怖い、というか、こういっては何だけれど、気味が悪いというか、シャルル・ボワイエ扮する夫の異常性が映画全編から、ひしひしと伝わってきて、途中でもう勘弁、と言いたくなるような映画だった、どんな映画やねん。

 

今回の「ガス燈」は、シャルル・ボワイエイングリット・バーグマン主演、ジョセフ・コットンが刑事でわき役で出演している古い映画だ。シャルル・ボワイエが叔母とその姪とを、計画的、緻密にかつ残忍に殺害し、かつ、心理的に追い詰めていく、イングリット・バーグマン迫真の演技、この映画でアカデミー賞ゴールデン・グローブ賞の主演女優賞をとったのもさもありなん。

 

シャルル・ボワイエ扮する夫が、その妻イングリット・バーグマン心理的に追い詰めていくその手法を”ガスライティング“と言い、一種の心理的虐待方法で1970年代後半以降この言葉が使われるようになったそうだ。冒頭に書いたように、何が怖くて気味が悪いのかというと、シャルル・ボワイエ扮する夫が、妻から信頼を勝ち得ているのをいいことに、妻を知人、近所の人から遠ざけて孤立化させ、妻に物忘れをよくするな、という指摘をこれ見よがしに要所要所でしていく、些細な間違いを言いたてる、などして妻の精神状態を不安定にしていって、最後は妻は病気であるといいたてて、屋敷内に隔離しようとする、その過程に妻が反抗もできずに、NOと言えずに、夫の言いなりにはまっていく、そんな過程が、シャルル・ボワイエの強引で、断固とした妻に対する心理的虐待が怖い、かつ、気味が悪い、さらに、こんなに自分の意思がなくなってしまう妻をみているのも。

 

映画を観ているほうからすると、なんで言い返さないの!であるとか、そんなこと気にすることはないんだよ!とか、言い返せよ!とか、反抗しなきゃダメだよ!とか、言いたくなって、若干いらいらしながら映画を観ることになる、そのくらい、夫の心理的虐待で神経の弱っていく妻を演じるバーグマンの演技はすごい。このまま、バーグマン演じる妻は、まんまと夫の罠にはまって狂気の人となってしまうのか、と暗い気持ちになりかけた頃、ジョセフ・コットン演じる刑事が登場して、一条の光がさす。見ているほうは、出てくるのが遅いよ!早く奥さん助けて!あなたしかいないよ!などなど、やきもきしながら、ジョセフ・コットン演じる刑事の行動を見守ることになる、と同時に真っ暗闇の奥さんの現状にさしこんだ救いの光に希望を託す。

 

実際にあった事件、誘拐されて、逃げるチャンスもあったと思われたのに、何年も何年も犯人と一緒に暮らしていた女の子の事件を思い出さずにはいられない、ニュースを見たその当時はよく理解できなかった、何故、少女はもっと積極的に逃げようとしなかったのか、と、不思議に思ったものだ、が、今思うと、犯人による”ガスライティング“があったのでは、と思ったりする、映画とまったく同じというわけにはいかないと思うが。

 

この映画は心理的虐待映画なので見てい楽しいシーンはない、ハラハラドキドキする場面も少ない、と言いたい、ハラハラドキドキではなくて、驚かされるような場面も用意されているのだが、はっきり言って、イライラやきもきする場面は多い、特に、ジョセフ・コットンが登場するまではイライラが募る、このイライラ感は人間というものがこうもたやすく他人によって支配されてしまう過程を見せつけられるためか。

 

なので、案外後味の悪い映画だったりするな、という感想、なので、バーグマンの迫真の演技もあるにはあるのだが、ここは、悪くないけれど残念な映画、としたいと思う。

 

#ガス燈#イングリット・バーグマンシャルル・ボワイエ